外来の裏話

カルテNo,7 治療が終わったのに終わらせてくれない理由

患者
28才の会社員
主訴
腰が痛い
ストーリー
日曜日に自宅で物を取ろうとしてはしごから転落し,腰を痛めた. 全治1週間位の打撲と診断し,しばらく理学療法を指示した. もちろん,レントゲン上も,神経学的な異常も全くない. 一週間分の消炎鎮痛剤とシップ薬で様子を見ることにした. どころが,なぜかなかなか改善しない. 自分の治療法が間違えているのかと思い,他医へ紹介しょうとすると,少し改善したと言う. いつのまにか1ヶ月,2ヶ月が過ぎる. 本人は毎日通勤するように,通院する. とうとう6ヶ月目になると,ある日,本人から診断書の山積みを出されてびっくり. 事故賠償保険加入者であった. よく聞くと,1日の通院で1万円が支給されるとの事である. 給料より多いとも言う. 診断書と明細書は一枚あたり,5千円だから全部5枚で2万5千円になりますよと言うと構わないとのこと.
考察
本人が痛いと仮病を言っても整形外科の場合,鑑別が難しい事がある. 保険会社の診断書に他の損保にも加入しているか,以前にもこの種の保険を使った事があるかを問う欄がある. 保険会社ぎりぎりの自衛手段なのだろう. 常習犯かも知れないが,医師である以上,疑いすぎることもいけない. 色々な病院を転々としている可能性があれば,前医に確認する事はあろう. まさに,通院と言うよりは通勤だったのかも知れない. 交通事故の場合,大げさに包帯を巻いて欲しい,診断書の治療見込み期間を長めに書いて欲しい,来たことにして欲しい等々頼まれることがある. 示談を有利に持ち込み,相手からより多くの保険金が欲しい事は一目瞭然. もしも,一度応じると弱みをつけ込まれる可能性と危険性は十分. これは立派な詐欺ほう助罪である。 良い医師にになるにはまず,患者さんにノ-と言えることから始まる