外来の裏話

カルテNo,5 ハルシオン中毒患者の決まり文句

患者
比較的若い水商売風の独身女性
主訴
眠れない
ストーリー
よく眠れないのです. 目つきは何となく落ち着かず,明るく振り舞うが,多弁である. 知らん顔して銀色の...薬と言う. 中には大胆にもハルシオン下さいとも言う. お酒はと聞くとあまり飲まないし,一緒には絶対に飲まないからと自分から進んで言う. 仕事はほとんどが夜の仕事か芸能関連. これでないと絶対に効かないんですと言われたら要注意. さすがに他の薬は詳しいときはプロ. いわば,医院のショプピング歴が長いことを自慢しているようなもの. 初診の時はまず,どんな医師でも卒後3年目以上の医師なら簡単に見抜けられる. 一番の特徴は必ずと言っていいほどできるだけ多めにほしがる. ここまで来たら,私はハル中ですと告白しているようなもの.
考察
不思議と不眠の人は肝臓が悪い人が多い. お酒が原因だが,眠れないから飲むのが原因で悪循環. 一番の悩みは善良な不眠者を見分ける事及びアル中と睡眠剤中とのバランス. つまり,肝臓が悪くなるよりはかえって多少の睡眠剤も必要である. 当院では特にアルコ-ルを毎日飲む人と不安定な状態と思われる人には断っている. 1錠あたり1000円で六本木で売られるかも知れないと思うと医師は診断の能力のみならず,鑑別の能力も要求される. 一回に10錠飲んで幻覚状態に陥り,自分の家に放火してしまった人もいたようである.