外来の裏話

カルテNo,48 あの病院の薬は効かない

患者
27才のサラ-リマン
主訴
眼が赤い
ストーリー
「眼が赤いから診て欲しい」と言って来院. 診察すると,ウィルス性の結膜炎で両眼とも赤い. 「いつ頃からですか?」「二日前に右の眼が初め赤くなり,実は他の眼科で眼薬をもらいました」とのこと. もらった眼薬は一般的な治療剤で全く問題がないので一日何回点していたかを尋ねると 「一日1-2回しか点していませんでした」その理由を尋ねると「すぐ左にも移って聞かないと思いました」 この薬をそのまま指示通り,一日4回点すことを指示して4日後すっかり改善した.
考察
流行性結角膜炎の場合(俗に言う流行目)すぐに両眼が赤くなってしまうから薬が効かないと思ったらしい. 結膜炎に限らず,皮膚科の場合も風邪の場合も全く同じ事が良くある. 悪くなっていく最中には薬は効かないのである. 坂道の下り坂でブレ-キを踏んでも車はすぐには止まれないのと同じである. 急ブレ-キは危険であり,あまり勧められないのである. 逆に上り坂ではブレ-キは要らないのに欲しがったりもするから薬は要らないと説明を すると,「あの病院は薬も出してくれない」である. いちいち説明をする訳にもいかず,当院の患者さんも今日もどこかで「あの先生の薬は効かない」とか「あそこは薬も出さない」と言って他の病院を転々しているだろう 風邪の治りかけの時でも何かを少し出して上げると「お陰様ですっかり良くなりました」に決まっている. これでは日本の薬の量は減らない仕組みである. 私たちがまず,人間には自然治癒の能力がある事をまず国民に啓蒙しなくては......