外来の裏話

カルテNo,33 医師の病気は誰が診るの?

患者
40才代の医師
主訴
お尻が痛い
ストーリー
先日の結婚式でスピ-チの後,飲み過ぎ,疲れ,食べ過ぎから下痢に. 急にお尻が痛くなりしゃがんで鏡で覗くとこれは大変! 親指大の変なものもこちらを覗いているのではないか? いぼ痔と診断し,座薬を挿入するも改善せず. 本日,少し離れた外科の病院を受診.もちろん,問診票の職業欄はブランクに. 先生に指診されたあと曰く「これは痔ですね」「手術は必要ないですがとりあえず座薬で」 帰りに貰った薬を覗いたら自分の使っていた薬とそっくり. 自分の診断と治療は正しかった.
考察
当然の事だが,医師もみなさんと同じ人間である. 主治医は自分ではあるが,毎年の検診や人間ドックは欠かせない. 医師になって良かったと思う事の一つに早期診断と早期治療が出来るメリットがある. でも採血も点滴も自分では出来ないし,病気に罹らないと言う保証はない. 一番つらいことは自分にはガンの非告知が通らないこと. 本日のように医師であることを言わずに(隠した訳ではない)診察せざるを得ないこと. 同僚や先輩など知っている先生に見て貰うこともなぜかいやなのである. 大きな病気,小さな病気,恥ずかしい病気等々色々である. 逆に医師の診察ほど気を使うことも少ない. 本日診察して下さった先生には申し訳ないが医師であることを言わなかった理由は分かって貰えるはずである. 医師の不養生とはよく言ったもので,以外と医師の中には愛酒家や愛煙家が少なくない. 人の病気や悩みを聞いてあげることはストレスである事は事実である. だからこそ,自分が健康なうちに少しでも多くの患者さんに安心感を与え続けたい. 他の医師から手術を診察を受けるときには言いなりになってお任せしたい. 誰よりも,日頃の苦労をよく分かってるのだからせめてこんな時だけでも....... いい医師はいい患者になれるし,いい患者はいい医師にもなれるのだ.