外来の裏話

カルテNo,16 注射好きおじいさんのお話

患者
78才の老人
主訴
腰が痛い
ストーリー
「この注射の薬を打って欲しい」といきなりメモを見せられる。 見るとホルモン剤であった。 「他の病院で打って貰ったことは?」と尋ねると 「はい,あります」よく話を聞くとその先生もイヤになったらしい 「最初は良く打って貰ったのですか゛・・・・・その内保険が効かないと言われ1本5000円でした。」 「とにかく,この注射を何とかお願いします」と続く。
考察
昔の人は注射がお好きである。 反面,最近の医師や患者はとにかく嫌い。 中には若い人でも仕事があって休めないので注射を打って欲しいという人はいる。 こんな熱心な社員がうちの病院に欲しいと思うことがある。 注射によるトラブルが一時増えたことと点数が低い事が医師が注射を嫌う原因の一つかも知れない。 本症例は明らかに注射中毒である。 確かに心理的な要因で治癒が早まることは認めるが,医師の治療方針は無視である。 この薬出して欲しい,この薬でないと効かない,あの人が効いたから等など・・・・・・ まるで医師のように振り舞うので私はこの様な方には先生と呼ぶ事にしている。 最近この種の患者が増えて困っている。 きめ細かい医療とは本質的に違うのですがいくら説得しても固定観念は捨てきれないらしい。 一応,説明して納得して貰うようにはしているが,ここは薬局ではないと叫びたいのである。 本当の意味での良医とは何なのだろう? 注射も薬も検査もすべて医師に安心して任して欲しい。 無駄な医療費の削減にもなるのに・・・・・・・