外来の裏話

カルテNo,30 周りが心配する病気

患者
51才の会社役員
主訴
眼が赤い
ストーリー
「眼が赤いです」「最近疲れていませんか?」「そうです,疲れ気味でした」「眼の痛みやかゆみは?」「全くありません」 自覚症状は全くないのに「眼が赤い」と他人から言われて眼科へ来るケ-スが殆どである. 女房や会社の同僚に「眼底出血かも知れない」と脅かされる場合も. 本人は平気なのに周りが心配するから仕方なく来るケ-スが殆どである. 殆どは1-2週間で自然に治りますと聞いて本人はすっかり安心しているが,周りの対策も必要. もし,「ヒトに言われたら眼科に罹っていると伝えて下さい」と教えておく. なぜなら,移る病気とか大変な病気と勘違いされると仕事上,仲間外れになったら大変.
考察
球結膜下出血と言う病気であるが殆ど原因が分からない. 引越で重い荷物を運んだり,血圧が高かったり,お産や便秘の時など力んだ後に毛細血管が切れる為であるが,白目の赤い出血だから目立つ. 外傷以外にはそのほかに寝不足,暴飲暴食の時もある. 1年も毎日眼科に通った患者さんもいたが,当院では説明をして1回の診察で終わり. どうしても,周りがいじめる恐れがあれば眼帯を勧めて一週間後に再診察を命ずる. 多くの病気の中でこれほど自覚症状がなく,他人に脅かされて来る病気は他にない. あまりその他人がしつこい時には「連れてきたら説明します」と言っているが,一度も 一緒に来たケ-スはない. その他人も一度この病気に罹れば一番良いのだが,悪気はないはずと信じる. ありがたい迷惑かありがたい事かの結論が未だに出ない. なぜなら希ではあるが,この病気がきっかけで高血圧が発見される場合もある.